2008年6月16日(月)|第84回 定例講演会「水田は地球を救えるか?」開催

水生植物、特にヨシの浄化能力に着目し、ヨシ根圏で脱窒が進行し、生成した窒素ガスはヨシの地下茎から地上茎を通じて大気に放出するといった持続型窒素除去能力をヨシが有していることを示してきた。実際に水辺の再生・復元事業や植物を利用した水質浄化事業(植生浄化)では、ヨシが多く採用されてきた。こうした事業は、主に公共事業の一環として実施されている。一方、琵琶湖や渡良瀬遊水地にみられるように、古くからヨシは“よしず”をはじめとして人々との生活の中で活用されてきた。しかしながら、最近では、そうしたヨシの活用が困難となってきた。すなわち、ヨシを中心とした循環型システムがまわりにくくなった。

そこで、刈り取り後も有効利用でき、しかも、公共事業ではなく、農家自身が積極的に取り組む可能性のある多収米である飼料イネに着目した。現状では単なるコメを生産するフィールドである“水田”を食糧と環境保全を確保しつつ、再生可能なエネルギー及びバイオマテリアルを生み出す場に変える。この技術革新は、地球の人口が増加していく中で低エネルギー消費を要求される近い将来において、「生存の危機を克服する」手段として、コメを主食とするアジアを中心にグローバルに適用できるキーテクノロジーとなるのではないか。さらに、こうした“水田”に基づいた社会はどのようなものか、それこそが「低炭素社会」、「自然共生社会」及び「循環型社会」のモデルになるのではないかと考えている。