2009年7月6日(月)|第92回 定例講演会「豊かな内湾再生を目指して」開催
現在、水産物の需要増大と水産資源争奪が世界的規模で激化しています。また、乱獲や環境悪化によりこのまま推移すれば21世紀半ばには世界の漁業は消滅するという衝撃的な報告もあり、海洋や漁業の未来に熱い視線が注がれています。
愛知県水産試験場の調査海域である伊勢・三河湾は豊かな栄養塩類(各種無機態窒素・リン)を含む厖大な淡水流入と固有の地形的特徴によって、日本の中でも稀に見る高い生物生産性や生物多様性を有している豊饒の海ですが、1970年代に入り赤潮・貧酸素化が急激に進行しその豊かさに翳りがみえるようになってきました。この環境悪化に対して流入負荷削減等の様々な対策が実施されてきていますが残念ながら改善の兆候はあまり見られていません。いったい何が問題なのでしょうか?
最新の研究結果を基に豊かな内湾再生の処方箋を提示したいと思います。
2008年7月24日(木)|第86回 定例講演会「社会資本整備審議会答申「水災害分野における地球温暖化に伴う気候変化への適応策のあり方について」-解説-」開催
気候変動に適応した治水対策検討小委員会は、気候変化に伴う水害や土砂災害、高潮災害等の頻度や規模などの特性及び社会に与える影響について分析・評価し、適応策を検討するため、社会資本整備審議会河川分科会に設けられた。従来の治水対策という狭い視点に限定するのではなく、より幅広い視点から検討を行うべく、水災害分野における適応策について具体的方向を明らかにするとともに、幅広い視点から適応策全般についてもその基本的な方向を明らかにした。講演ではこれらの概要について解説する。
2008年6月16日(月)|第84回 定例講演会「水田は地球を救えるか?」開催
水生植物、特にヨシの浄化能力に着目し、ヨシ根圏で脱窒が進行し、生成した窒素ガスはヨシの地下茎から地上茎を通じて大気に放出するといった持続型窒素除去能力をヨシが有していることを示してきた。実際に水辺の再生・復元事業や植物を利用した水質浄化事業(植生浄化)では、ヨシが多く採用されてきた。こうした事業は、主に公共事業の一環として実施されている。一方、琵琶湖や渡良瀬遊水地にみられるように、古くからヨシは“よしず”をはじめとして人々との生活の中で活用されてきた。しかしながら、最近では、そうしたヨシの活用が困難となってきた。すなわち、ヨシを中心とした循環型システムがまわりにくくなった。
そこで、刈り取り後も有効利用でき、しかも、公共事業ではなく、農家自身が積極的に取り組む可能性のある多収米である飼料イネに着目した。現状では単なるコメを生産するフィールドである“水田”を食糧と環境保全を確保しつつ、再生可能なエネルギー及びバイオマテリアルを生み出す場に変える。この技術革新は、地球の人口が増加していく中で低エネルギー消費を要求される近い将来において、「生存の危機を克服する」手段として、コメを主食とするアジアを中心にグローバルに適用できるキーテクノロジーとなるのではないか。さらに、こうした“水田”に基づいた社会はどのようなものか、それこそが「低炭素社会」、「自然共生社会」及び「循環型社会」のモデルになるのではないかと考えている。